黒木晋一君、ご結婚おめでとう。
入社以来、総務部員として私のもとで仕事に励んできてくださったきみが、本日、このように盛大に晴れの華燭の典を挙げられますことは、まことに喜ばしく、心からお祝いを申しあげます。
黒木君はかねて、結婚の理想として、ジャン・ジャック・ルソーの「他人の好みにかなう妻ではなく、自分の好みにかなう妻を求めよ」という言葉を引き合いに出されたことがありますが、今日の花嫁が、きみの好みにかなう新婦であることを、私は信じて疑いません。
ところで、日本の四文字熟語の一つに「疑心暗鬼」という言葉があるのをご存じでしょうか。
これは、"疑心、暗鬼を生ず"の略で、疑いの心が、暗く鬼のような恐ろしい心を生み出すという意味です。
人を疑い始めれば、何もかもが疑わしく不安になり、そこに猜疑心が生じて、人間関係を根底から破綻させる結果になります。
こうした疑心暗鬼による悲劇は、歴史的にみても数知れませんし、家庭内だけでなく会社内におい
てもしばしば起こり得ることです。
私が新郎新婦のおふたりにお願いしたいのは、この"疑心暗鬼"だけは絶対に夫婦の間に忍び込ませないでいただきたい、ということです。
これさえなければ、夫婦生活はおのずからうまくいくものと思っております。
疑心暗鬼になるのは、おおむね何らかの誤解があるためですから、夫婦の間に誤解の種を絶えず残さないようにしておくことが大切です。
わが国では、とかく"弁解しないこと"が美徳のようにみなされてきましたが、それはとんでもない誤りであり、正当な弁解は大いにして、つねに心の通じ合う夫婦になっていただきたいと思います。
黒木君、総務部長の私としても、今後のきみの仕事ぶりに大きな期待をかけております。
どうか、この結婚を機に一大飛躍をめざし、企業人としても大成していただきたいと存じます。
また、ご列席の皆さまにおかれましても、どうぞ、このフレッシュなおふたりに惜しみないご支援を賜りますよう、くれぐれもお願い申しあげます。
本日は、まことにおめでとうございます。