本日は、まことにおめでとうございます。
元木欽四郎でございます。
新郎の津村君は、わが環境省に入庁されて五年になり、仕事にも精通されて、第一線の行政官として大いに活躍しておられます。
昨今では、地球的規模での環境破壊の問題が取り上げられ、環境保全の必要性が叫ばれております。
こσような情勢から、わが環境庁に課せられる責任は重大であり、各方面から寄せられる期待には計り知れないものがございます。
そのような意味で津村君に期待するものも大きいのですが、局員一同もいっそうの奮励努力をしなければなりません。
ところで、本日はおめでたい席でございますので、はなむけの言葉に代えて、万葉集の歌をご紹介したいと思います。
過ぐる連休に、私は、長野県へ足を延ばしてまいりました。
久しぶりに信州の高原の旅情を満喫しながら、ふと、信州には学生時代に親しんだ万葉集の歌がたくさんあることを思い出しました。
東歌と呼ばれる素
朴な方言で詠まれた歌でございます。
しかも、信濃国の東歌には、不思議に男女間、あるいは夫婦間の思いやりが込められたものが多く、古代の地方庶民の心情をしのぶよすがともなると存じます。
私がいま諸んじておりますものの一つに、このような歌がございます。
『信濃路は新の墾道、刈りばねに足踏ましなむ、沓はけわが夫』
はりみちは開墾したばかりの道、かりばねは切り株です。
これは妻から夫への呼びかけですが、夫からの妻への思いやりを詠んだものもたくさんございます。
夫婦が幸せを保っていける特効薬は、なんと申しても相互のちょっとした思いやりにまさるものはございますまい。
本日の新郎新婦も、もしけんかなどをした折には、あとでそっと、それぞれひそかに万葉集をひもといて、信州の東歌でも味わってみられることをお奨めいたします。
ご結婚を機に、新郎が人間的な幅を一段と増し、仕事でもいっそうの精励に努められることを期待いたしております。
どうか、ご列席の皆さまも、この輝かしいニュー・カップルに、大いなる祝福と温かいご支援を賜りますよう、お願い申しあげます。
ご清聴、たいへんありがとうございました。社長 結婚