新郎の会社の社長が媒酌人の場合の例(後半)

かくのごとき田崎君でありますから、取引先にも気にいられ、この二年間で七組も見合いの話が持ちこまれまして、困ったものです。

いや、笑いごとではございません。

経営者といたしましては、こういうとき、まことに困惑するのでございます。

お得意様のご機嫌を損じてはと悩みながら、丁重にお断りするのは骨が折れるものでございます。

新婦の山田理江さんは、私どもの得意先でもあり、提携先の山田産

業社長山田留吉、美江子さんご夫妻の次女として、健やかにお育ちになちれた才媛であられます。

山田社長自らが、田崎君の人間を見込み、実は私があまりよく承知していないうちに直談判なされて、お見合いをおすすめくだされ、今日まで一年間おつき合いを重ねて、本日のご盛儀と
なったのでございます。

田崎新夫妻のことばによりますと、次男、次女でありますから、これからは二人だけの生活に入られるとか。

山田様ご一家という心強い後見役がついておられますから大安心でございますが、甘い新婚生活のなかにも、社会の荒波がおしよせることもあろうかと存じます。

どうぞ皆様、そのときには厳しいお導きとご厚情をもって、新家庭にご助力いただけますようお願いいたします。

お二人に代わりまして、私からよろしくお願い申しあげて、ご挨拶にかえさせていただきます。

ありがとうございました。